作品データ
原題
Incendies
ジャンル
ミステリー
監督
ドゥニ・ヴィルヌーヴ
出演
ナワル・マルワン(中東系カナダ人女性で、双子のジャンヌとシモンの母親):ルブナ・アザバル
ジャンヌ・マルワン(ナワルの娘で、シモンの双子の姉):メリッサ・デゾルモー=プーラン
シモン・マルワン(ナワルの息子で、ジャンヌの双子の弟):マクシム・ゴーデット
公証人ジャン・ルベル(ナワルを秘書として雇い、家族同様に接してきた。ナワルの遺言書を双子に渡す):レミ・ジラール
アブ・タレク(監獄の拷問人):アブデル・ガフール・エラージズ
マダッド(レバノンの公証人。ジャンヌらの父親と兄探しを手伝う):アレン・アルトマン
製作国
カナダ・フランス合作
公開年
2010年
上映時間
131分
あらすじ
ここからは、ネタバレ多少あります
この映画は、劇作家ワジディ・ムアワッドの戯曲がベースとなった悲劇の物語です。
双子の姉弟ジャンヌとシモンが、亡くなった母ナワルから受け取った遺言には、父親と兄弟がいることが書かれており、彼らを探し出すようにという内容でした。
姉弟は、遺言に従い、母の故郷であるレバノンへ向かいます。
そこで彼らは、レバノン内戦下での、母の壮絶な過去や、家族の衝撃的な秘密を知ることになっていきます。
鑑賞後の感想
双子の姉弟の母の、レバノン内戦下での、壮絶な過去を見たあと、明かされる家族の真実に驚かされました。
また、戦争の悲惨さも心に残る作品でした。
興味を持たれた方は、ぜひご覧になってみてください。
物語
ここからは、多くのネタバレがあります
双子
カナダのアラブ系の女子大生ジャンヌ・マルワンは、母親ナワルが死んだことを知らされ、双子の弟シモンと共に遺言書を受け取りました。
それはナワルが、死の間際に、口伝えした文章であり、棺には入れずに裸のままで埋葬して、墓碑も建てないでほしい、と記されていました。
また、墓碑を建てたいのであれば、同封したニ通の手紙を父親と兄に届けなさい、と書かれていました。
しかし、二人は父の名を知らず、兄がいることも知りませんでした。
双子の姉、ジャンヌは、遺言に従い、父と兄を探すために、レバノンに旅立つことになりました。
ナワル
35年前、レバノンではキリスト教徒とイスラム教徒が激しく対立していました。
ナワルが暮らしていた、キリスト教徒の村の近くには、隣国を追われたイスラム教徒の難民キャンプがありました。
ナワルは、難民のムスリムの青年と恋愛し、妊娠しました。
ナワルの兄弟は、この二人の関係を一族の恥と見なしてムスリムの青年を射殺し、ナワルも殺そうとしました。
しかし、ナワルは、祖母に命を救われ、町の叔父の家から大学に通うように指示されました。
生まれた息子は、生後すぐに孤児院に預けられ、ニハドと名付けられました。
ダレシュ
数年後、ナワルの国はキリスト教徒とイスラム教徒の間で内戦状態に陥りました。
孤児院のある南部の戦闘が激しいと知ったナワルは、一人で南部に向かいました。
しかし、孤児院は焼け落ち、息子の消息はわかりませんでした。
南部
ジャンヌは、母親の故郷の村を探し当てます。
デレッサ
イスラム教徒の女子供まで虐殺するキリスト教徒の兵士たちを激しく憎んだナワルは、イスラム教徒の側につき、キリスト教徒である政府の要人に接近して射殺しました。
クファリアット
ジャンヌは、母が15年間も監獄に収監されていた事を知ります。
歌う女
ナワルは、拷問を受けても屈せず、いつも歌っていたために「歌う女」と呼ばれ、イスラム教徒たちからは尊敬される存在でした。
20年前、洗脳されない強情なナワルを痛めつける為に、凄腕の拷問人アブ・タレクが監獄に派遣されます。
ナワルは、アブ・タレクによる拷問で身ごもり、獄中で子供を生んでから釈放されました。
ジャンヌとシモンは、その時に生まれた子供だったのです。
サルワン
ジャナーン
弟のシモンも中東に飛び、調査をはじめました。
ニハド
兄のニハドは孤児院から拉致され、イスラムの戦士として成人しました。
シャムセディン
その後キリスト教徒に捕えられ、洗脳されて拷問人アブ・タレクになったということが、しだいにわかりました。
アブ・タレクは、後にカナダに渡り、一般人として生活していました。
ナワルは、アブ・タレクをプールサイドで見かけ、更に彼が息子である事を知り、そのショックで、急激に体調を崩して亡くなったのでした。
姉弟は、母の遺言通りに、アブ・タレク(ニハド)に二通の手紙を渡し、すぐに立ち去りました。
「父親への手紙」には、双子が監獄の拷問で生まれた彼の子供である事が書かれていて、「息子ヘの手紙」には、母として息子を愛するナワルの心情が書かれていました。
ネタバレ含む感想
双子の姉弟の、父親と兄が同一人物であったという事実がわかり、衝撃的でした。
まとめ
『灼熱の魂』は、カナダの映画監督ドゥニ・ヴィルヌーヴが、レバノン出身のカナダ人劇作家ワジディ・ムアワッドの戯曲『焼け焦げるたましい』を映画化した作品です。
この映画のテーマは、愛と憎しみや、暴力と和解、過去と現在、そして家族の絆と秘密です。
亡くなった母の遺言に従って、父と兄を探すためにレバノンに旅立った双子の姉弟が、母の壮絶な人生と、衝撃的な家族の真実に辿り着きます。
この映画は、人間の心の深層にある感情や葛藤を描き出しており、強い印象を観客に与えます。
原題の『Incendies』という言葉はフランス語で「火災」や「戦火」を意味します。
このタイトルは、映画の中で描かれる内戦や家族の悲劇を象徴しています。