作品データ
タイトル
ハッチング -孵化-
原題
Pahanhautoja
ジャンル
ホラー
監督
ハンナ・ベルイホルム
製作国
フィンランド
公開年
2022年
上映時間
91分
出演
ティンヤ(主人公の12歳の少女。体操選手を目指す):シーリ・ソラリンナ
ティンヤの母(完璧な家族像をSNSで発信するインフルエンサー):ソフィア・ヘイッキラ
父親:ヤニ・ヴォラネン
テロ(母の不倫相手):レイノ・ノルディン
マティアス(弟):オイヴァ・オリラ
あらすじ
ここからは、ネタバレ多少あります
主人公は12歳の少女ティンヤ。
体操選手として母の期待に応えようと努力しますが、家庭はSNS映えを重視する“仮面家族”です。
ある日、森で奇妙な卵を見つけ、こっそり自室で温めます。
卵から孵化したのは、異形の怪物。ティンヤはそれを「アリー」と名付け、密かに育てます。
アリーは次第にティンヤに似た姿へと変化し、彼女のストレス源を排除するような行動を取り始めます。
鑑賞後の感想
SNSインフルエンサーの母親とその家族という現代的なキャラクターが出てくるホラー作品で面白かったです。
興味を持たれた方は、ぜひご覧になってみてください。
物語
ここからは、多くのネタバレがあります
主人公は12歳の少女ティンヤ。体操部に所属し、母親の期待に応えるため日々努力しています。
母親は「理想の家族」をSNSで発信することに執着しており、家庭は見せかけの幸福に満ちています。
ある日、家に迷い込んだカラスを母親が冷酷に殺してしまいます。
ティンヤはその死骸を捨てますが、森でそのカラスの卵を見つけ、家に持ち帰って育て始めることにします。
卵は異常な速さで成長し、やがてティンヤほどの大きさの怪物が孵化します。
ティンヤはその存在に恐れながらも愛着を抱き、「アッリ」と名付けることになります。
アッリはティンヤに懐き、次第に人間の姿へと変貌していきます。
外見はティンヤにそっくりになり、まるで“もう一人の自分”のようです。
しかし、アッリはティンヤのストレスや怒りを代弁するかのように、競技のライバルや母親の浮気相手の子どもに危害を加えていくことになります。
アッリの行動はティンヤの内面の苦しみを反映しており、二人は肉体的にも精神的にもリンクしており一方が傷つけば、もう一方も痛みを感じます。
ティンヤはアッリの暴走に恐怖を覚え、罪悪感と混乱に苛まれます。
母親は家庭の崩壊を認めず、ティンヤの苦しみを理解しようとしません。
ティンヤは自分が育てた“怪物”をどうすべきか葛藤します。
母親はアッリの存在を知り、ティンヤとともにアッリを殺そうとしますが、アッリを刺した瞬間、ティンヤも胸から血を流して倒れます。
最後に、倒れていたアッリが立ち上がり、母親に向かって「ママ」と呼びかけます。
ネタバレ含む感想
現代的なテーマが描かれており興味深く鑑賞しました。
理想的な家族の仮面がどんどん壊れてしまう恐ろしい展開で怖かったですが、面白かったです。
まとめ
『ハッチング』は、母娘関係、思春期のアイデンティティ形成、SNSによる自己演出など、現代的なテーマをホラーという形で寓話的に描いています。
ティンヤが育てた怪物は、彼女の抑圧された感情の象徴であり、観る者に深い不安と問いを投げかけます。
ホラーというジャンルを借りながら、実際には家族、社会、そして自己との関係性を問い直す哲学的な作品です。
ハンナ・ベルイホルム(Hanna Bergholm)は、フィンランド出身の映画監督で、彼女の作品は、北欧ホラーの新潮流を牽引する存在として評価されています。
彼女は、女性の内面や社会的プレッシャーを映像で表現することに強い関心を持っており、特に「母と娘」「承認欲求」「抑圧された感情」が物語の核となっています。
『ハッチング』では、薔薇やパステルカラーといった“ラブリー”なビジュアルを逆手に取り、息苦しさや制約を象徴的に描いています。
この作品は、サンダンス映画祭ミッドナイト部門でプレミア上映、ジェラルメ国際ファンタスティカ映画祭でグランプリを受賞しています。